食事介助をしてみたけど、どうやって食べさせたら良いか介助の仕方がわからない、どこに注意して介助したら良いの?という疑問を考えた事ありませんか?
介護の現場で欠かせない「食事介助」。しかし、初めての方にとっては、どのように行えば良いのか不安がつきものです。
食事は、ただの栄養補給ではなく、利用者にとって大切なコミュニケーションの時間でもあります。正しい知識と技術を身につけることで、安心して食事を楽しんでもらうことができるのです。
この記事では、初心者でも簡単に理解できる食事介助の基本から、安全に行うためのポイント、効果的なテクニックまでをわかりやすく解説します。
ぜひ、最後まで読んでいただき実践に役立てていただけると幸いです。
1.食事介助の基本姿勢
食事介助を行う際は、利用者の横に座り、目線を合わせましょう。これにより、利用者の表情や様子を観察しやすくなります。
1-1. 介助者の位置
介助者は利用者の横に座ります。これを「側座位(そくざい)」と呼びます。側座位をとることで、以下のメリットがあります。
- 利用者の表情や嚥下(えんげ)の様子を観察しやすい
- 利用者と同じ目線で介助できる
- 誤嚥(ごえん)のリスクを軽減できる
注意点:立ったまま介助すると、利用者の顎が上がりやすくなり、誤嚥を誘発する可能性があります。
1-2. 利用者の姿勢
利用者がベッド上で食事をする場合は、以下の点に注意しましょう
これらの姿勢調整により、誤嚥のリスクを軽減し、安全に食事を摂ることができます。
1-3. 食事介助の手順
2. 自分のペースで味わおう:安全な食事介助のための注意点
2-1.適切な姿勢の確保
食事介助を行う際は、利用者の姿勢が非常に重要です。正しい姿勢を「ファウラー位」と呼びます。
- ベッドの角度を30〜60度に調整する
- 頭部を少し前傾させ、顎を引いた状態(前屈位)にする
- 体幹が左右に傾かないよう、必要に応じてクッションで支える
この姿勢により、誤嚥(ごえん)のリスクを軽減し、嚥下(えんげ)をスムーズにすることができます。
2-2.食事時間の管理
食事時間は30〜40分を目安とし、長くなりすぎないよう注意しましょう。
長時間の食事は利用者の疲労を招き、誤嚥のリスクが高まります。
2-3.適切な食事形態の選択
利用者の嚥下機能に合わせた食事形態を選択することが重要です。主な食事形態には以下があります:
- 普通食
- 軟菜食(やわらかく調理した食事)
- きざみ食(細かく刻んだ食事)
- ミキサー食(なめらかにすりつぶした食事)
嚥下機能が低下している場合は、とろみ剤を使用して食事にとろみをつけることで、誤嚥を防ぐことができます。
2-4.口量と食べるペースの調整
一口量は小さめにし、利用者の嚥下のペースに合わせて介助を行います。
「一口30回」を目安に、ゆっくりと咀嚼(そしゃく)してもらうことが大切です。
2-5.観察の重要性
食事中は以下の点を常に観察します
- 嚥下の状態(むせていないか)
- 顔色や表情の変化
- 疲労の様子
- 食事の進み具合
特に、「サイレントアスピレーション」(無症状誤嚥)に注意が必要です。これは、むせることなく食べ物が気管に入ってしまう状態で、肺炎のリスクが高まります。
2-6.口腔ケアの実施
食事の前後に口腔ケアを行うことで、唾液の分泌を促し、嚥下機能を高めることができます。
3. 食事形態と嚥下について
嚥下(えんげ)とは、食べ物を飲み込む機能のことを指します。
加齢や疾患により、この機能が低下することがあります。そのため、嚥下機能に合わせた適切な食事形態を選択することが重要です。
3-1.主な食事形態
- 普通食:通常の食事形態
- 軟菜食:やわらかく調理した食事
- きざみ食:細かく刻んだ食事
- ミキサー食:なめらかにすりつぶした食事
3-2.嚥下食のレベル分類
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では、嚥下食を5段階に分類しています
- レベル0(嚥下訓練食品0):氷片など
- レベル1(嚥下訓練食品1):ゼリー状のもの
- レベル2(嚥下調整食2):ペースト状、ムース状のもの
- レベル3(嚥下調整食3):軟らかく、まとまりやすいもの
- レベル4(嚥下調整食4):箸やスプーンで切れる軟らかさのもの
3-3.嚥下のメカニズム
嚥下は以下の5つの過程に分けられます
- 先行期:食べ物を認識し、唾液分泌を促す
- 準備期:咀嚼(そしゃく)して食塊(しょっかい)を作る
- 口腔期:舌の運動で食塊を咽頭へ送る
- 咽頭期:食塊を食道へ送り込む
- 食道期:蠕動運動で食塊を胃へ送る
3-4.嚥下しにくい食材の例
以下のような食材は嚥下が難しいため、注意が必要です
- 水分(とろみをつけることで対応可能)
- こんにゃく、かまぼこなど弾力性のあるもの
- おから、ひき肉などのボロボロしたもの
- 生野菜、ごぼうなど繊維質の多いもの
- のり、わかめ、餅など口腔内や喉に付着しやすいもの
4. 効果的な食事介助のテクニック
4-1.適切な一口量の調整
一口量は利用者の嚥下(えんげ)機能に合わせて調整することが重要です。一般的に、ティースプーン1杯分(約5ml)を目安とします。これを「一口30回」のペースで咀嚼(そしゃく)してもらうことで、安全に食事を進めることができます。
4-2.食べるペースの調整
利用者のペースに合わせることが大切です。「嚥下5期モデル」を意識しながら介助しましょう。
- 先行期:食べ物を認識し、唾液分泌を促す
- 準備期:咀嚼して食塊(しょっかい)を作る
- 口腔期:舌の運動で食塊を咽頭へ送る
- 咽頭期:食塊を食道へ送り込む
- 食道期:蠕動運動で食塊を胃へ送る
各段階を観察しながら、次の一口を提供するタイミングを図ります。
4-3.リラックスした雰囲気づくり
食事中の会話は、唾液分泌を促し、嚥下機能を高める効果があります
ただし、会話に夢中になりすぎて誤嚥(ごえん)のリスクが高まらないよう注意が必要です。
4-4.自力摂取の促進
「残存機能の活用」を心がけ、できる限り自分で食べる動作を促します。
必要に応じて自助具(特殊な食器やスプーン)を使用することで、自立支援につながります。
4-5.食材の工夫
嚥下機能に合わせた食事形態を選択します。
必要に応じて「とろみ剤」を使用し、液体にとろみをつけることで誤嚥を防ぎます。
4-6.口腔ケアの実施
食事の前後に口腔ケアを行うことで、唾液分泌を促し、嚥下機能を高めることができます。
「口腔体操」を取り入れるのも効果的です。
4-7.ポジショニングの重要性
食事中は「ファウラー位」と呼ばれる30〜60度のリクライニング姿勢を取り、顎を軽く引いた状態(前屈位)にします。これにより、誤嚥のリスクを軽減できます。
4-8.観察と声かけ
食事中は常に利用者の状態を観察し、適切な声かけを行います。
特に「サイレントアスピレーション」(無症状誤嚥)に注意が必要です。
5. 食事介助時の観察ポイント
5-1.嚥下(えんげ)の状態
嚥下とは食べ物を飲み込む機能のことです。以下の点に注意して観察しましょう
- 喉頭挙上(こうとうきょうい):のどぼとけの上下運動を確認
- むせこみの有無
- 嚥下反射のタイミング
- 食べ物が口腔内に残っていないか
特に「サイレントアスピレーション」(無症状誤嚥)に注意が必要です。これは、むせることなく食べ物が気管に入ってしまう状態です。
5-2.顔色や表情の変化
- チアノーゼ(唇や爪の色が青紫色になる)の有無
- 顔の紅潮
- 苦痛や不快感を示す表情
5-3.疲労の様子
- 食事の進行に伴う疲労度の変化
- 姿勢の崩れ
- 食事に対する意欲の低下
5-4.食事の進み具合
- 食事摂取量
- 食べるペース
- 食べ物の好み悪みの傾向
5-5.口腔内の状態
- 口腔内残渣(ざんさ)の有無
- 唾液の分泌状態
- 義歯の適合状態
5-6.呼吸状態
- 呼吸のリズム
- 呼吸音(ゼーゼー、ヒューヒューなど)の有無
5-7.姿勢の維持
- 食事中の姿勢の変化
- 体幹の傾き
- 頭部の位置(前屈位が保てているか)
5-8.コミュニケーション能力
- 食事に関する意思表示の有無
- 介助者の指示への理解度
まとめ
今回は食事介助について解説しました。食べる為の基本である食事介助は一歩間違えると大きな事故に繋がります。
ただ食べさせれば良いというわけではなく、介助する相手の状態を常に観察し食べれる状態であるのかを確認する必要があります。
その為には基本をしっかりと学び理解しなければなりません。
この記事で少しでも学んでいただき参考していただければ嬉しいです。
正しい食事介助の方法を身に付けていきましょう。
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